ココロトタマシイ
「な、なんだお前!!裏切ったな!!!」


そうだ、今はこいつと話してる場合じゃない。

あいつを何とかしないと。


「うるせぇ奴だなぁ…。
裏切るもなにも、お前と組んだ覚えはねーよ」


「なんだと!?」


わなわなと震えて怒りを露にする奴は、今にも彼女を殺しそうだ。


「健次、あんまり挑発するなよ」


「へいへい」


ほんとに分かってんのかこいつ…。

でも今はこいつに協力してもらう他に手はない。


「大丈夫だって。
そんな怖い顔しなくたって俺がなんとかしてやるさ」


「なんとかって……」


「まあ見てろって」


健次はにこやかに片目を瞑ると、スタスタと奴に近付いて行った。

それに怯えたのか、奴はカッターを見せつけるように彼女に向けた。


「そ、それ以上近付くな!この女殺すぞ!!」


「……人質を取らなきゃ勝てないなんて、お前相当弱いんだな」


「なに?!」


「だってそうだろ?現に靖に鎌を捨てさせなきゃ傷一つ付けられない」


「しかも他人の力で」


「くっ…う、うるさいうるさいうるさい!!!」


「なに?またこの女殺すって?
ワンパターンな奴だな」


顔を真っ赤にして怒る奴に更に追い討ちをかける健次。

今のあいつは、相当な悪人面だ。

あいつのことだから何かしら考えがあってのことなんだろうけど……。

さすがに挑発しすぎじゃないか?


「おい健次……――」


「お前に勝ち目はねーよ」


「黙れぇぇぇ!!!」


「きゃっ!」


奴は彼女を放り出すと、カッターを振り回しながら健次に襲いかかった。

健次は難なく奴の頭上を飛び越えると、背後から奴の頭に銃口を向ける。


そして、涼しい顔をして軽々と引き金を引いた。


「はい、おしまい」

地面に崩れ落ちた奴は、指先から徐々に砂になって空に舞い上がっていった。


それを見届けると、健次がこっちを振り返ってVサインを向けて言った。


「さあ、後片付けして帰ろうぜ」


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