ココロトタマシイ
全く、こいつには敵わない。

思わず笑みを零しながら、なんとか気力で立ち上がる。


「お、おいおい。お前は座ってろって。
傷、痛むだろ?」


「自分がやったくせによく言うよ」


「あれはだなぁ……――」


「それに」


「あんた一人じゃ無理だろう?」


なんか言いかけた健次の言葉を遮って、核心を突けば。

さすがの健次も何も言ってこない。

渋々ながらも僕に鎌を投げ渡すと、いつになく真剣な顔で言った。


「絶対に無理はするんじゃねーぞ。
やばくなったらそこの嬢ちゃん連れて逃げろ」


どうやら、今日はふざけたことを言う奴が多いみたいだ。


「逃げるなんて冗談じゃない。
やばくなる前に終わらせるさ」


相変わらず肩も、腕も、足も、脇腹もだいぶ痛いけど。

そんなの構ってられない。

健次一人にやらせるなんてできない。

平静を装って不敵に微笑めば、頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。


「よーし、靖。一気にやるぜ!」


「当たり前」







そこからは記憶が曖昧で、気が付いたら敵は誰もいなかった。

ただ、その気付いた時には手足が痺れて感覚がなくなっていて。

だんだん目の前が霞んで、ぼやけていった。

足に力も入らなくて、倒れる寸前に健次に支えられて。


「馬ー鹿。無理すんなって言ったろ?」


耳元で囁かれた言葉に言い返す気力も残ってなかった。


あと覚えているのは、目の前が真っ暗になる寸前にみた彼女の泣き顔と。

涙が入り交じった声で僕の名前を呼ぶ、彼女の声。


いつの間にか僕は意識を手放していた。


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