ココロトタマシイ

交換取引-南Side-

――…嫌な夢を見た。

これはきっと、初めて他人の魂を盗ったときの夢。

大鎌がやけに重くて、手が震えていた。

僕を見る怯えた目も、あの悲痛な叫び声も。

頭から焼き付いてはなれない。


魂を奪ったあと、僕は暗闇をさまよっていた。

何も見えない、先が見えない闇。


“お前はここから出られない”


頭に響く嫌な声。

耳を塞いでも直接頭に伝わる。


我慢できなくなって、闇の中を駆け出した。

走っても走ってもゴールに辿り着くことはない。


あるのは。



……果てしない、闇……―――。



「っ!!!」


まるで掻き立てられるように目が覚めると。

嫌な汗をかいていた。

窓の外からは暖かな日差しが覗いていて。

雀の鳴き声が、少しだけ心を安心させる。


真っ白い天井に。

真っ白い壁。

ここは……。


「いっ……!」


ゆっくりと起き上がると、脇腹に突き刺すような痛みが走った。

よく見ると、腕に点滴が繋がっていて、撃たれたところに包帯が巻いてある。

ふと横を見ると、ベッドに上半身を預けて、椅子に座ったまま眠っている彼女がいた。


こいつ…何でいるんだ?


背中には健次のジャケットが掛かっているから、健次に着いてきたんだろうけど……。

でもなんで……――。


いきなりガチャリと音がして、ドアの方を見ると。

のんきな顔をした健次が立っていた。


「おー目が覚めたか」


「ああ…まあね」


健次はあくびをしながらこっちに歩いてくると。

彼女の上に掛かったジャケットを直しながら言った。


「美麗ちゃんに感謝しとけよ~。
この娘、お前が処置室から出てきてからずーっと看病してたんだぜ?」


「…………」


「まぁ、俺が来たときには寝ちまってたけどな」


満面の笑みを浮かべながら言う健次は、とても優しい目で彼女を見た。

こんなに優しい表情の健次、久しぶりに見た。


彼女のことがよっぽどお気に入りなんだろう。


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