ココロトタマシイ

しばらく沈黙が続いて、どう他の話をしようかと思案していたとき。

コンコンッ


誰かが病室のドアをたたいた。


「どうぞ」


南くんが返事をすると、ガラッとドアが開く。

健次さんかな。

そんな私の予想は外れ、室内に入ってきたのはショートの赤い髪をした女の子。

私と同い年くらいの……って。


「あっ!!」


今日、道を教えてくれた神様みたいな娘!

私が思わず叫ぶと、彼女も私に気づいたみたいで、小さく声をあげた。


「あっ…!あなた、そこで道に迷ってた―――」


「はい!
あのっ、ありがとうごさいました!」


慌てて椅子から立ち上がり、深々とお辞儀をすると。

彼女は驚きながらも優しく微笑んでくれた。


「いえ…どういたしまして」


「なんだ、美雪。
そいつと知り合いだったんだ」


南くんは私たちを見比べると、意外そうに言った。

それに美雪、と呼ばれた赤髪の女の子は冷静に受け答える。


「知り合いっていうか…顔見知りっていうか…ちょっと道を教えてあげただけよ」


「ふぅん…お前もよく面倒なことやるよな」


「あら、困ってる人を助けるのは当然のことじゃない?」


「面倒なだけだよ。
僕はごめんだね」


「まったく…靖はいつもそうなんだから………」


昔はこんなんじゃなかったのに…。

そう呟きながら両手を腰に当てて、ため息をつく彼女。


昔は、ってことは…南くんとこの人って幼なじみかなんかなのかな。


「あ!そうだ、これ。
チェリーパイ焼いてきたんだけど…食べる?」


彼女はそう言いながら、持っていた籠からラップのかかったパイを取り出す。

すごい、売ってるやつみたい…。

美味しそう。

これには南くんも興味を示したみたいで、ちらりと横目で見ると。


「…………もらっとく」


と言って、食べかけのりんごをテーブルに置いた。


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