ココロトタマシイ

素直に食べたいって言えばいいのに。

でも美雪さんは嬉しそうに目を細めて、小皿にパイを移し、南くんに渡す。

彼はそれを受け取ると、フォークで一口サイズに切って、口へと運んだ。


「…どう?」


少し不安気な彼女が尋ねると、彼は食べながら淡々と返事を返す。


「うん、うまいよ。
美雪は昔から何でもできるしな」


リアクション薄っ!

私はそう思ったけど、彼女はあれで満足だったらしく。

少し照れたように微笑んでいて、頬がほんのり赤く染まっていた。


「そんなこと、ないけど…ありがと」


もしかして、美雪さんって…。


「よかったら…あなたも食べる?」


「へっ?あ…ありがとうございます!」


唐突に声をかけられて、思わず変な声を出しながらも、

美雪さんからパイを一個受け取る。


…………やっぱり、二人きりにしてあげるべき…だよね?

よし!


「あの、私、帰ります!
えっと…これ、ありがとうございました!

南くん、お大事にね」


早口でそう二人に言い残すと、私は早々に部屋を飛び出した。


< 45 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop