ココロトタマシイ
素直に食べたいって言えばいいのに。
でも美雪さんは嬉しそうに目を細めて、小皿にパイを移し、南くんに渡す。
彼はそれを受け取ると、フォークで一口サイズに切って、口へと運んだ。
「…どう?」
少し不安気な彼女が尋ねると、彼は食べながら淡々と返事を返す。
「うん、うまいよ。
美雪は昔から何でもできるしな」
リアクション薄っ!
私はそう思ったけど、彼女はあれで満足だったらしく。
少し照れたように微笑んでいて、頬がほんのり赤く染まっていた。
「そんなこと、ないけど…ありがと」
もしかして、美雪さんって…。
「よかったら…あなたも食べる?」
「へっ?あ…ありがとうございます!」
唐突に声をかけられて、思わず変な声を出しながらも、
美雪さんからパイを一個受け取る。
…………やっぱり、二人きりにしてあげるべき…だよね?
よし!
「あの、私、帰ります!
えっと…これ、ありがとうございました!
南くん、お大事にね」
早口でそう二人に言い残すと、私は早々に部屋を飛び出した。