交換彼氏??


学校へ行けば氷姫、氷姫と呼ばれ、家ではお嬢様、お嬢様。


どちらも私の名前が呼ばれることなんて
ほとんどないのだ。


その中で私の名を呼んでくれるのはきっと私のカレと花奈のみ。

兄弟はあまり合わないから
例外としても…。


お父様もお母様も、お爺様もお婆様も、
誰も私を私とは思わない。



"錦の後継者"


ずっとそう私を見て育てて来た。


勿論初めは兄や弟のことも後継者として
視野に入れていたはずだ。


でも男には何があるかわからない。


反抗期でグレてしまうこともある。

今の弟が正にその状態だ。


だから女も一応後継者に、ということ。


それに私は昔から従順で、
誰にも文句なんて言わなくて。

そんなとこが余計に彼らに後継者として見られるきっかけになったのだと思う。



家では落ち着かない。


学校でも落ち着ける場は少ない。





"場所"と"居場所"は全くの別物だ。





私には体を休めるための"場所"なんて
たくさんある。

錦の力を…いや、私だけの力でも十分、
それを作るのは可能だ。


だけど、本当に心が休む"居場所"は、
たとえ錦の力を使ったとしても、
手にはいるものではない。


居場所なんて、私にはない。


だからこそ私は彼氏や友達という存在に
"執着"を覚えたのかもしれない。



もう遠い昔、
私には婚約者や友達がいた。


婚約者は正直、よく顔も覚えていない。

会ったのだってせいぜい1、2回。
話したことも全くなくて。

なんせ相手は私より5つも年上で。

でも家柄はとても良くて是非に、
ということだったのだ。


だけど当時の私は安心していた。

生涯一緒にいると約束されている人がいるのがとても幸せだと思っていた。

寂しい思いをしなくて済む。
本気でそう思っていたから。


いつの日だったか知った、
お年寄りの孤独死。


誰にも見つかることなく、
寂しく独り死んだ人達。

どうしても、独りは嫌だと思った。


パートナーを見つけられなかったら、
もしかしたら私も同じ未来を辿るんじゃないかって、ただ恐怖だった。







だけど、ある日相手の会社が倒産した。


あんなにも大きな会社だったのに、景気の流れのせいか莫大な借金を抱えた。


錦は勿論、婚約破棄を申し出た。


それも、
借金を肩代わりすることを条件に。



私の生涯のパートナーはその日、
一瞬にして消えてしまった。


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