calling
006
浮気…なんて最低。

私は、やっぱり、手を繋いだ。
俊輔さんの手を、そっと。

「でも、好きなんですよね。
…その女性のこと。」

ずっと考え込んでしまうくらい。
あの暖かい太陽の下で
キラキラした空の下で。

私は、俊輔さんの気持ちが
少しだけ分かる気がしていた。

答えが出ないこと、出せないこと、
結局、正しい答えなんか無いこと。

「普通、別れろとか言うのに、
亜妃ちゃんは違うんだな。」

そっと繋いだ手を…ぎゅっと
されたような気がした。
俊輔さんの手は温かい。

「恋人のこと許せないですか…?」

背の高い俊輔さんの目線が
私の目まで下りてきた。

思わずキスされるのかと…
変な錯覚をしてしまった。

少し静かになった交差点で
見つめ合っていた、気がする。
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