calling
公園から観える歩道に…
あの綺麗な女性を観た。

背すじを伸ばしてハイヒールを履いて
大きめのカバンを細い腕で持って
…髪はしっとりおとしていた。

颯爽と歩く女性だから
一瞬しかみえないのに、とても
素敵な女性だって分かる。

俊輔さんの会社のあるビルに
吸い込まれるようだった。

私もあんな綺麗な女性だったら
私にも…もしかしたら…。

「何考えてる?」

声の主の方に目をやると
私の座るベンチの横に
そっと腰かけた俊輔さんだった。

「あ。お疲れ様です。」

「また…考え事?」

声掛けてくれた声にも
気付かなかったのかもしれない。

「いいえ。前とは違います。
…俊輔さんのコト、考えてました。」

私はニコッと笑って、お弁当箱を
俊輔さんの目の前で揺らした。
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