僕らのはなし。①


前の人が弾き終わり、係員さんに案内され、壇上に出ていった。

審査員の人達や観客の人達にお辞儀をすると、ピアノ演奏が始まった。
弾き始めると私は緊張がとけ、いつも演奏に夢中になる、だから今まで失敗した事はほとんどない。

でも、前の先生に習っていた時には何度も間違えた。
スランプもあった。

だけど、やっぱり続けて良かった。
演奏が終わった後、会場の人達の拍手を聞く度にそう思う。


コンクールの最後の表彰式…特別優秀賞を取る事が出来た。


控え室に戻ろうと移動していると、控え室前にここにいるはずのない人達が。

「伊崎…結城先輩も。
どうして??」
「実里さん、晶さんの友達なんだ。
それでコンクール今日だって聞いて。」
「これ…。」
私の質問に結城先輩が答えてくれると、伊崎が無愛想ながらも可愛らしい花束を手渡してくれた。

「ありがとう。
どうだった??」
「凄い良かったよ。」
「良かった。」
「これ着とけ。」
同じく音楽をやってる結城先輩にそう言ってもらえて喜んでると、急に肩に伊崎の着てたシャツが乗せられた。

「えっ、何で??」
「良いから。」
「意味がわからない。」
「フフッ」
「えっ、何??」
「純は星野の肩を見せたくないんだよ。」
「時雨!!」
聞いてもよく分からなくて首を傾げていると、結城先輩が笑った。
気になって聞いてみると、そう答えてくれて、焦ったように伊崎が怒鳴った。


わけが分かって、自然と笑顔になる。
ホントは少し嬉しいから。


「もう帰るぞ。」
「えっ、もう少し待って一緒に帰らないの??」
「家族も居るだろ?
じゃあな。」
そう言って、まだ私を気にしてくれる結城先輩を引っ張って帰ってしまった。





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