詐欺師の恋
途端、久々に息を吹き返したスマホが音をたてる。





「これも、替えなきゃな―」





鞄から取り出して、表示を確認した。






「………何」








《久しぶりなのに、その態度はないんじゃない?》







電話の相手は、苦笑交じりに話し出す。






「何か用?」





運転席に深く腰掛けて、天井を仰いだ。






《…いや、どうしてるかな、と思ってね。》





かけてきた割には、目的を中々言おうとしない。






「…燈真こそ、どうしてるのさ。」





この男が、世間話をしに電話を掛けてくるわけがなかった。





《…やっぱりお前が居ないとつまんないんだよね。構ってよ》






「……何言ってんの。つーか、そこには暫く行かないよ。」






《…へぇ。じゃ仕方ないかな。けど、葉月が会いたいって五月蝿いし…時間があったら顔出してやってよ。》






「面倒。」





溜め息を吐けば、燈真は更に楽しそうに笑った。




《相変わらず容赦ないねぇ。…でも、さ、勘違いしてるみたいだったから、ひとつ忠告しておくね。出て行く時に言えばよかったなぁ。》






「…何。」






《空生、さ…所詮詐欺師は詐欺師で生きてくしかないんだよ?今更、捨ててどうこうって道は、ないんじゃないかな。どうあがいたって普通の世界にはいけない。》






西日が、眩しい。




片手で持ったネックレスをかざして見れば、きらりと輝く。








「…知ってる。」








アルバトロスは、もう居ない。

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