詐欺師の恋
『なぁ、燈真。あれから、10年以上経ってる。…もう、十分だろ?俺が居なくたって不自由してないはずだ。』





空生の口から零れた言葉が身体を硬直させる。




『な、に、言って…俺はお前に協力してやって…』




無抵抗の相手に、全て見透かされているような気持ちになった。





『兎に角。次はやらない。もう、ターゲットを紹介されても受け付けないから』





空生の意思の強さが、言葉ひとつひとつに籠められているようで、上手い台詞が思い浮かばない。





そこへ。




『ほらほらほら!さ、座って座って!今夜は零の最後のステージなんだからさ、仲良く仲良く!!』





間に割って入る崇によって、ぐいぐいと引き剥がされる。




『っ―』




暫く空生と視線が交わっていたが、自分から逸らした。






ずっと自分の掌の上で転がっていたボールが、急に飛び跳ねて落ちていってしまったような。




どうしようもない無気力感に襲われた。



そうこうしている内に、夜が明けて、カウンターの脇に置かれていた鍵。





『挨拶もなしかよ』





チャラチャラとわざと音を立てて、その鍵を掴んだ。




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