Baby boo!




「先輩最近なんか、やつれてません?」

「やっぱり?」

職場の医局でデスクにもたれかかっていると、後輩の水島颯太が心配そうに声をかけてきた。
日頃の睡眠不足がたたって、うなだれていたのだ。


「どうしたんすか、具合悪いんすか?」

「いや、最近睡眠不足でな……」

「あー、寝れないのきついっすよねー。俺もおととい明けでオールして昨日も終電まで飲んでたんすけど、さすがに辛いっすもん」


……そ、それは、それは。
こいつは、なんつー恐ろしい生活送ってんだ。

しかし、若さとは素晴らしい。
昨日も終電まで飲んでたっていう割に驚くほど爽やかな奴だ。
キシリトールガムのCMに出れるよ。

今流行りの若手俳優にいそうなイケメンだし。
口のきき方は置いといて、気の利くいい奴だし。
一番年の近い後輩で、出身大学も一緒ってだけあって、よく俺を慕ってくれていた。


「お前、モテるだろ?」

「え?まぁ、人並みに。でもすぐ振られちゃうんすよね~。なんでですかね?」

なんでって……

デスクの上のある物が目に入って、あぁ、そうだったと思い出す。

そう、デスクの上に置かれているのはよく分からない女の子のキャラクターのフィギュア。
そう奴は正真正銘のオタクなのだ。
しかもその趣味を隠すどころか公にしている。

大方、こいつの外見にひっかかってよくも知らないうちに告白したのはいいものの、正体を知って振るっているパターンなんだろう。こいつに自分から告白する位だから、ある程度のレベルの女の子だろうし。

……しかし凄まじいギャップだ。









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