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だけど、彼は医学部には進まなかった。

何度もお願いしてみたけれど、他に興味があると。

大好きなお兄ちゃんだった。

だからこうやって2人でお出かけするのも本当は嬉しいはずだった。

でも… 何だか楽しくない。何だか腑に落ちない。

秦ちゃんがお医者さんにならなかったから?いや、違う。

家までの帰路をずっとモヤモヤを抱えながら歩いていた。

「秦ちゃん、もうここでいいよ。今日はありがとう」

家の前で別れようとすると、腕を掴まれ 次の瞬間抱きしめられていた。

「絹香。俺、絹香が好きだよ」

「!! ぃや!」

突き放してしまった… これがあたしの答えなんだ。

「絹香!」
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