奥様のお仕事
ここに浩一郎がいてくれたらどんな
重苦しい宴でも きっと心強く 私には最高の思い出になる
大みそかだったに違いない・・・・。


去年の今頃まさか 今年の大みそかがこんなことに
なっているなんて想像すらできなかった。

そして祖父がこの世にいないなんて
思いもしなかった。


ここは敵ばかり・・・・・
祖父と過ごした貧しいけど何にもなかったけど
優しさの溢れた温かい時間が懐かしくて 泣きそうになった。
どんなにあの当たり前の時間が
私にとって大切な時間だったのかをまた


改めて痛感しながら
もっとこれくらいの料理を頑張ればよかったとか後悔した。


「間に合った~~~!!!」

背後から大きな声がして振り返った。


スーツ姿の浩一郎が立っていた。


「帰りは明日じゃなかったのか?」
父親が言うと

笑顔で私を見て

「愛する奥さんを一人ここで闘わせるわけには
いかないんで 何とかギリギリ帰って来れました」


あまりのサプライズに涙が出た。


「意地悪されたか?」
浩一郎が笑った。


「ビックリして・・・・・・」



「マリンは泣き虫だからな~」

私の頭を優しく撫ぜながら隣に座った。
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