奥様のお仕事
「二日間よろしく頼むね」

素晴らしい和洋室のお部屋に通されて 心は弾むのに
顔が笑えなかった。


「どうぞ何卒おっしゃってくださいませね」

挨拶に来た 女将と談笑する浩一郎


「本当に可愛らしい奥様ですね」


「ありがとうございます
お世話になります よろしくお願いします」

浩一郎の隣に並んで頭をさげた。



女将が部屋を去って行くと 二人っきりになった。


「この部屋に露天風呂がついてるんだよ」


大きなガラス戸を開けると


「きゃ~~~!!」

素晴らしい庭園の中に
寒い空気に もくもくと湯気があがってる。


「温泉だから いつでも同じ温度だから
時間ずらして 入ろう」


本当の夫婦なら 二人で体を寄せ合い 温泉を楽しめるのに


「部屋の風呂も 温泉だぞ」


「今日は寝ないで温泉だね」



「三階の最上階には 大浴場と展望露天風呂があるから 湖がきれいだよ
そこも二日もあれば 楽しめるだろ?」


あまりの豪華な施設にいつしか
機嫌の悪さも吹っ飛んでいた。


「素敵 素敵 すごく素敵」


「やっと笑った」


「え?」


「マリンの笑顔が見れた」

少しさびしそうに浩一郎が微笑んで 胸が痛んだ。
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