奥様のお仕事
「大丈夫ですか?」


「すみません ちょっとなつかしくて
恥ずかしいところ見せちゃって」
佐伯さんが心配そうだから 申し訳なくなった。


「では ここで失礼します」


「え?」


「若のこと よろしくお願いします」


そう言うと 12F のボタンを押してドアが閉まってしまった。


それにしても 祖父の絵のすごさに感激してしまって
あんなにすごい絵を描いていたのかと
今頃知って申し訳ない気分だった。


心を洗ってくれるような絵だった。

「島に帰りたい・・・・・」

当たり前に見ていたあの海は もう遠い彼方
簡単に帰ることができなくなってしまった。


あの海を見なくなって まる一日たってしまったけど


「じいちゃんの絵が海見せてくれた
じいちゃん・・・・・何で死んじゃったの」


悲しくなって涙がまた溢れる。
ここなら人目もなく 泣けるけど・・・・・・


扉が開いたら 浩一郎が立っていた。


「泣き虫さん」


優しい声に また涙が止まらなくなった。
子供みたいに 泣けて来て


私の腕を静かに 引いて胸の中に抱きしめてくれた。
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