Love Butterfly
 その日の晩ご飯は、いつもの通り、全然美味しくなかったけど、全然楽しくなかったけど、うちは、ずっと、あの子と、バイクのこと、考えてた。部屋に戻って、うちは、スケッチブックを出して、あの子の、絵を描いた。雨の中で、バイクに乗ってる、あの、不良の子の絵。
「うちな、今日、バイク乗ってんで」
お友達に、そう言って、うちは思わず、顔が赤くなった。
「ち、ちがうよ。これは、バイクの絵を描きたかってん」
 ドキドキ、する。胸が、なんか、いたい。息が、苦しい。
 なんとなく、制服の匂いを、嗅いでみた。なんとなく、あの子の、匂いがする。
「うちも、バイクでもっと、走ってみたいな」
遠くで、かすかに、バイクの音がする。もしかしたら、あの子のバイクかもしれへん。あの子は、どっかで、きっと、バイクに乗ってる。
 その夜は、なかなか寝られなくて、うちはずっと、どっかから聞こえる、バイクの音を聞いていて、そして、あの子の背中のことを思い出して、あの子のこと、考えてた。

 そのまま、夏休みになって、うちは、家にいるのがイヤで、補講って、嘘をついて、毎日図書館に通ってた。ううん、ほんまは、あの子を、探しに行ってた。図書館の周りとか、駅の周りとか、うろうろ探したけど、やっぱり、あの子はいてなくて、結局、あれ以来、会うことはできなかった。
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