Love Butterfly

(3)

 夏休みも終わりになって、その日は、ほんまの登校日で、お昼過ぎに、駅を降りた。すごく暑くて、もう、あの子を探すのも、諦めてたから、図書館に行こうと思ったら、ロータリーのところで、何人かの、不良みたいな子らが、座って、タバコを吸ってた。大きい声で笑ったりしてるから、通る人がみんな、目を逸らしながら、迷惑そうにして、うちも、同じように、知らん顔して通り過ぎようと思ったけど……「あの子……」
 その中に、あの子がいた。周りの不良の子と一緒に、タバコを吸って、大き声で喋って、笑ってる。うちは、全然、迷わなかった。迷わんと、あの子の所に、まっすぐ、歩いて行った。
 顔の傷は、だいぶん治っていて、小さい絆創膏が、一つになってた。近くまで行ったけど、なんか、急に、ドキドキして、もしかしたら、うちのことなんか、もう覚えてないかもしれんし、やっぱり、ちょっと怖いし、って考えてたら、あの子が、うちの顔見て、おお! って、手を振った。
「久しぶりや!」
「こ、こんにちは」
周りの子らが、誰やねん、とか言って、その子は、ちょっと顔を赤くして、知り合いや! って言って、輪からちょっと離れた。
「この前は、ありがとうございました」
「なんや、そんなん、ええよ」
 あの時は、顔におっきな傷があったから、あんまりわからなかったけど、真正面から見たら、なんか、めっちゃ、かっこよくて、うちは、ドキドキして、何にも言われなくなってしまった。
「何してんの?」
「えっ。あの……今から、家に帰るところです」
「暇なんやったら、遊ぼうや」
「は、はあ……あの、遊ぶって、何して?」
うちの言葉に、周りの子が笑って、うちはなんかめっちゃ恥ずかしくて、泣きそうになった。でも、その子は、優しく笑って、停めてあるおっきな、ピカピカのバイクを指差して
「俺らの遊ぶ、ゆうたら、あれや」って、言った。
「そうやなあ、今日は、南港まで、走ろか。その前に、腹ごしらえや」
 その子は、行くでって、みんなに声かけて、そしたら、座ってた子らが、みんな立ち上がった。その後、ファストフードのお店にみんなで行ったけど、うちは、そんなお店に入ったのは初めてで、どうやって注文するのかもわかれへんし、マゴマゴしてたら、その子が、代わりに注文してくれた。
「うまいか?」
「うん、うち、初めて食べてん。めっちゃおいしい!」
「そうか、よかった」
 みんなでわいわい言いながら食べてたら、他のお客さんが、迷惑そうな顔してたけど、でも、うちは、こんなにおいしく何かを食べたのは初めてで、怖いっておもってた子らも、なんかおもしろくて、優しくて、すごく楽しくて、いっぱい、涙出るくらい笑って、お腹いたくて、うちはずっと、ここにいたくなった。みんなにいろいろ聞かれて、うちはいつのまにか、みんなに『京子』って名前で呼ばれていた。ずっと前から友達やったみたいに、みんな、ふつうに、うちを、京子って呼んでくれた。そして、あの子は、慎一くんって、いう名前で、このグループの、リーダーやった。
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