この気持ちをあなたに伝えたい
「普通に高校生活を送っていた」
「へぇ・・・・・・」

 礼雅は信じていない。他に何か話すように促しても、最愛はそれ以上口を開かなかった。
 沈黙を破るために礼雅は自分のことを話すことにした。

「俺の高校生活を教えてやる」
「そんなの話さなくても、少しは知っている」

 改めて話す必要がないことを最愛が伝えると、礼雅は納得した。
 だったら他の思い出話をしようとしたときに携帯電話の着信音が鳴り響いた。最愛は急いで電話に出ると、さっきまで話をしていた本人からかかってきた電話だった。

「もしもし?」
『もしもし、最愛! 美鈴だよ!』

 タイミング悪く、美鈴が電話をかけてきた。

「どうした?」
『確認したいことがあって、今、大丈夫?』

 最愛は礼雅を一瞥して、背を向けた。

「大丈夫だ」
『あのさ、最愛の部屋に本を忘れたみたいなの。部屋に置いていない?」

 確認をしたいと思っていても、それをすぐにすることができない。

「えっとな・・・・・・今、家にいないんだ」
『もうとっくに夜だよ? 家族とどこかに出かけているとか?』

 最愛が礼雅の家にいることを伝えると、美鈴は有頂天になった。

『何をしていたの!?』
「一緒に映画を観ていただけだ」

 美鈴のテンションが上がっていることが耳に伝わってくる。

『最愛! せっかくだから礼雅さんと話したい!』
「いや、それは・・・・・・」

 困るので断ろうとしたら、礼雅が最愛の携帯を取り、美鈴と話を始めた。
 美鈴が話したがっていることや本を忘れたことも礼雅はしっかりと聞いていて、何やら話が盛り上がっている。最愛が耳を傾けようとしても、礼雅は最愛の耳を塞ぐ。やっと解放されたときにはすでに電話を切った後だった。
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