この気持ちをあなたに伝えたい
 礼雅は明日も仕事なので、晴れることを願っている。
 何気なく携帯電話のメールを確認していると、美鈴からメールが届いていた。メールの内容は傘が役に立ったので、その礼と次に会うことができる日を教えるように書かれていた。

「美鈴ちゃん?」
「おい! 勝手に見るなよ」
「見ていない」

 後ろから礼雅が覗き込んでいて、本文をしっかりと読まれた。最愛はメールの返事をせず、そのまま鞄の中に投げ入れた。

「そんなに隠されると気になるな」
「美鈴も子どもだ」

 決して恋愛対象にならないことを最愛は礼雅に強く言う。

「何も恋愛対象として見ようとしているんじゃない。ただ・・・・・・」
「ん?」
「隠すことに必死になっているから、見たくなっているだけだ」

 美鈴と会うときは礼雅が仕事へ行っているときか、今日のようにボロを出さずに外で会うことにする。

「美鈴ちゃんとは高校の頃から友達なんだよな?」
「そうだ」
「会ってみたいな。高校の頃の最愛がどんなだったか聞くことができたのに・・・・・・」

 そのとき最愛は動揺して、持っていたフォークが音を立てて皿の上に落下した。礼雅に話しかけられたが、最愛は空になった皿を洗うためにキッチンへ逃げ出した。
 どんな顔をして礼雅に会えばいいのか、どんなに考えても頭の中は混乱していて、答えが出なかった。最愛が礼雅のところまで戻ると、礼雅はいつもと変わらない態度だった。
 最愛は嫌な質問が飛んでくる覚悟をしたのに、いつまで待ってもそれが飛んでこない。

「私の高校時代に興味があるのか?」
「そりゃああるな。知らないから」

 礼雅は小さい頃から最愛を知っている。
 だから、その空白を埋めようとしているーー知らないのは高校生の最愛だけ。
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