この気持ちをあなたに伝えたい
 先生が汗を流しながら来たのはそれから二分後のことだった。
 午前の授業が終わり、いつもと違うところで食べることにした。昼食はいつも学食で食べることが多いが、古霜先生がいる可能性があるので、深香と教室で食べていた。

「最愛、まだ食欲がない?」
「うん。風邪を引いたときはご飯を食べることがきついから」

 せっかく母が作ってくれたのに、箸が進まないことがあるので、その度に申し訳なく思った。
 出されたものの量は少なめだから残さずに食べることができると自信があっても、実際、全部食べることができなかった。

「早く治るといいね」
「うん・・・・・・」

 最愛が弁当を食べて片づけているときに深香が飴をくれた。

「ありがとう。これでも食欲は戻ってきているんだよ」

 数日経てば体調が戻ることを信じている。

「なら良かった。元気になったら、またどこかへ遊びに行こう?」
「楽しみだね。私のマンションの近くには店がいっぱいあるから、見ているだけでも楽しめるんだよ」

 マンションから約十五分歩くと、巨大ショッピングモールがある。そこは駅とは逆方向にあるので、一人で行くことはあまりない。昔から駅の近くにあるさまざまな店に足を運んでいた。

「まだ最愛のマンションへ行ったことがないね」
「そうだね」

 休みのとき、遊びに来るように誘った。

「駅まで迎えをお願いね?」
「もちろん。駅から近いけど、マンションが見えないから、ちゃんと私が案内するね」

 昼休みは深香といつものようにお喋りを楽しみながら時間を過ごし、午後の授業では気持ちを切りかえた。
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