この気持ちをあなたに伝えたい
 体育館の時計を見ると、次の授業まであと六分だったので、早く保健室の中へ入ってくれないかと思っていた。
 仮にここで出て行ったら、すぐに怪我に気づき、次の授業があっても手当てをすると保健室に引きずられるのは目に見えている。このままだと確実に遅刻してしまう。
 体育館の中にはトイレもあるので、そっちへ行って水で汚れを落としてから絆創膏を貼った。
 授業が始まるまであと四分。まるで時限爆弾のようだと鼻で笑った。早く保健室に入るか、どこか遠くへ行ってほしいことをひたすら願った。

「もし、古霜先生が何かあったらすぐに言ってくださいね?」
「よろしいのですか?」
「はい。力になりますので」

 先生も他の人達のように古霜先生に気があるようだ。

「それはいつでも?」
「当たり前ですよ」
「ありがとうございます。心強い先生に思わず惚れてしまいそうになります」
「そ、そんな・・・・・・」

 女の先生はその一言でパニックに陥ってしまったようだ。
 開いているか開いていないかわからないくらいにドアを開けると、古霜先生は女の先生の反応を見て面白がっている。古霜先生はこうやって自分に近づく女をからかっていた。少しずつ彼に対する嫌悪感が大きくなっていく。
 遠回りになるが、別の出入口から更衣室へ戻った。次の時間は音楽でいつも時間通りに到着する先生ではないから、急げば間に合う。痛みを堪えながら走った。

「間に合った」
「どうしたの? 先生と話していたの?」
「違う・・・・・・」

 汗を掻きながら走ってきた最愛に深香は不思議そうな顔して見ている。

「そうじゃないよ。のんびりと着替えていただけ」
「傷は大丈夫?」
「まだ痛いけど、大丈夫だから」
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