この気持ちをあなたに伝えたい
 数日後、職員室から出て教室へ戻る途中に誰かに強い力で腕を引っ張られて最愛は悲鳴を上げた。静かにするように言ったのは古霜先生。
 引きずりこまれた場所は視聴覚室で彼の行動に恐怖心が強くなるばかり。

「久々に会ったな」
「そうですね・・・・・・」

 古霜先生の声は嬉々としていて、最愛は心の内で溜息を吐く。

「先生、どうするつもりですか?」
「だって話がしたかったのに、全然会いに来ないから」

 古霜先生の責めるような口調に最愛は顔が歪みそうになるのを堪えながら、淡々と話した。

「忙しいので・・・・・・」
「体調はどうだ?」

 あれからどれだけ日が経っているのだろうか。
 古霜先生の行動は危険。どこで誰が見ているかもわからないのに、気にすることなく会いに来る。しつこくつきまとってくる古霜先生を払い除けたい衝動に駆られている。
 最愛は自分の体調が良好であることを伝え、視聴覚室から出ようとすると、古霜先生は通れないように前に立ちはだかった。

「通してください」
「俺がただお前の体調を心配しただけだと思うのか?」

 まるでそれだけではないことを言いたそうにしている。

「そうだと思っていました」
「違うな・・・・・・」

 会話のキャッチボールに構っている気はない。そう訴えても、古霜先生は一歩も動こうとしない。

「会ったら抱きしめたくなるし、キスだってしたくなるものだ」
「先生のペースに合わせる気はありません」

 偉そうにしている古霜先生を見て、心底どうでもよくなった。調子がいい古霜先生に溜息を吐きたくなったが、何とか我慢する。
 古霜先生が最愛の額にキスをしようとしてきたので、とっさに避けた。膝に力が入らず、バランスが崩れそうになったところ、古霜先生に支えられた。
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