この気持ちをあなたに伝えたい
 深香に何をしていたのか質問をされて、最愛は曖昧な返事しかできなかった。

「ちょっとな・・・・・・」
『ん?』
「ところで用件は何だ?」

 どうして最愛の居場所を知りたがるのか、理由はいくつか浮かび上がる。その中で可能性が高いのが遊びの誘い。

『一緒にカラオケへ行かない? せっかく大学が決まったしね』
「いいな」
『でしょ?』

 まだ二人で大学入学を祝っていなかったので、ちょうど良い。

「行く。それと愚痴を聞いてもらってもいいか?」
『いいよ。じゃあ、学校の最寄駅にいるから、すぐにおいで?』
「わかった。ちょっとだけ待っていてくれ」
『後でね』

 電話を切って駅へ向かうと、深香が最愛に気づいて手を振っているのが見え、最愛は深香のところまで走った。

「ごめんな、待ったか?」
「ううん、そんなに待っていないよ」
「どこのカラオケに行く?」

 高校の近くにカラオケ店が数店舗あり、気分によって行くところが変わる。

「えっと、コンビニの近くにあるカラオケ店にしない? 安い上に曲の数がたくさんあるから」
「いいな、行こう」

 カラオケ店に到着して、時間はフリータイムにしてドリンクを選ぶ。学生で会員登録をしているから安い。

「何を飲む?」
「私はアイスティーにする。深香は?」
「えっとね、カルピスウォーターにしようかな」

 セルフサービスとなっているので、二人分のドリンクをグラスに注いで部屋へ戻ると、深香は知らない歌を歌っていた。
 どうやらアニメの歌みたいで、アイスティーを飲もうとしたときにはもう歌い終わっていた。

「歌う? それとも愚痴を言う?」
「そうだな・・・・・・」
< 14 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop