この気持ちをあなたに伝えたい
 迷ったが、言わなければタイミングを完全に失ってしまいそうだったので、さっきのことを深香に全て話した。
 最愛が沈んでいると、深香におでこを指で突かれた。

「暗くならない!」
「だって・・・・・・」
「ちょっと話し方を変えたくらいで態度を翻すなんてつまらない男だよね」

 初めて最愛が口調を変えたとき、深香は驚いたものの、態度が変わるどころか、どこか面白がっている感じだった。

「しかも何!? 雛が可愛い? あはは! 笑える。ひどいことばっかするのに」
「どうしてそれすら気づかないのか・・・・・・」
「見る目がないってこと」

 最愛達が通う高校に雛が転校してきてすぐに最愛への嫌がらせが始まった。

「もう男なんて嫌だ・・・・・・」
「それじゃあ意味がないでしょ? 容姿だけにこだわらない男を捕まえればいいのよ・・・・・・」

 最もなことだが、現実はそんな都合良くない。

「あのな、そんな簡単に言うけどな・・・・・・」
「だからこそ!」

 深香は腰に手を当てながら、人差し指を最愛の目の前で出した。

「な、何だ?」
「彼氏を見つけるときはお互い冷静になって、相手を見ないとね」

 確かに深香の言う通りだった。自分が騙されやすい人間だから、多く時間をかけて相手をじっくり観察しなくてはならない。

「話を聞いてくれてありがとうな、深香」
「ふふっ、どういたしまして。あんな悪女に負けちゃ駄目だからね?」

 力強く頷いた最愛は口元を指先で拭った。

「深香・・・・・・」
「何?」 
「お手洗いへ行ってくる」

 予想外の言葉に深香は顔を引きつらせながら、肩を竦めた。
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