この気持ちをあなたに伝えたい
「うん。ちっちゃな子どもが親の服を着て楽しんでいるみたい」
「・・・・・・何それ?」

 礼雅なりに褒めているようだが、それは決して褒め言葉じゃない。
 いつまでも窮屈な格好でいたくないので、エレベーターへ向かおうとすると、礼雅もそれに続いた。

「どこかへ行くんじゃなかったの?」
「行こうとは思っていた」

 礼雅はマンションを出ようとしていたのに、向きが百八十度変わった。

「けど、大した用事じゃないからやめた」
「そう・・・・・・」

 最愛がエレベーターに乗って七階のボタンを押そうとする手を礼雅に掴まれ、そのまま六階のボタンを押した。

「何するの!?」
「遊びに来ない?」

 礼雅は今日特に予定がなく、暇なので、最愛に相手をしてもらいたい。

「あのね・・・・・・」
「菓子もあるから。一人で食べていても味気ないんだ」

 美味しい菓子と紅茶があることを知り、さらに最愛の欲が高まった。

「どうする?」
「行くにしても、着替えてからじゃないと・・・・・・」

 このままだと下手をすれば、汚れてしまう。

「俺の部屋で着替えれば?」

 笑顔で恐ろしいことを平然と言われ、最愛は数歩後ろへ下がった。

「絶対に着替えない!」
「残念だな」

 服は当然自分の家にあるから、どっちにしろ上の階へ行かなくてはならない。

「そうだ、忘れるところだった。最愛ちゃん、伝言があるんだ」
「伝言?」

 誰から伝言をもらっているのか考えていると、すぐに教えてくれた。

「お母さんから。今日は帰りが遅くなるみたいだから、夕飯は外で食べるらしいよ」
「そうなんだ、了解」

 そうなると、夕食は一人で食べなくてはならない。
< 24 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop