この気持ちをあなたに伝えたい
「着替えてからそっちへ行くから」
「うん。待っているね」

 礼雅と一度別れて家に戻ってすぐに着替えて、携帯電話、財布、本などを鞄の中に入れて、家の鍵を閉めてから下の階へ行き、チャイムを鳴らした。
 しかし本人が出てこなかったので、もう一度押すが、やはり反応なし。
 電話でもしているのかどうか、ドアの前で考えていると、いきなりドアが開いて腕を掴まれた上に中へ引きずり込まれた。

「れ、礼雅お兄ちゃん!?」
「すごい顔」

 油断は禁物であることを言われ、最愛は目を細める。

「驚かすなんてひどい・・・・・・」
「そう?」

 突然ドアが開いたら驚くのが普通の反応に決まっている。

「何かしていたの?」
「覗き穴から最愛ちゃんを見ていたよ」

 気配を感じていたから、そんなことじゃないだろうかと思っていた。遊ぶくらいならさっさと中に入れてほしかったと恨めしく思っていた。

「やっぱり・・・・・・」
「あれ? 気づいていたんだ?」

 礼雅は最愛がてっきり気づいていないものだとばかり思っていた。

「開けてくれたら良かったのに・・・・・・」
「ごめん」

 物音は一切なかったのに、気づいていたことに驚きを隠し切れていなかった。
 礼雅にソファに座るように言われて、本人はそのままキッチンへ行き、紅茶と菓子を用意してくれた。

「美味しい」
「本当?」
「うん、上手に淹れるから羨ましい」

 礼雅が淹れてくれたのはダージリン。最愛も家でときどき紅茶を淹れる。

「良かった。そうだ、最愛ちゃん、外で食事しない?」
「外食?」

 礼雅から食事の誘いをされることは滅多にない。
< 25 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop