この気持ちをあなたに伝えたい
「実は冷蔵庫の中がほとんどなくて、買い物は明日に行こうと思っているんだ」
「明日?」
「そうだよ」

 礼雅の話では明日になると、たくさんの商品が安売りになるから、買い物をする予定。

「いいよ。どこで食べる?」
「うーん・・・・・・」

 急なことなので、どこで食べるか迷う。

「飲食店が多いから迷うね・・・・・・」
「うん・・・・・・」

 マンションの周辺には数多くの店が並んでいて、どうしようか悩んでいると、礼雅は自分の手を叩いた。

「そうだ、友達が近くで働いているからそこにしない?」

 新たな情報が飛び込んできたので、少し興味を示す。

「何屋?」
「レストランだよ。どう?」
「うん。行きたい」

 六時になってから二人で家を出て、店へ歩き進んだ。まだどこも店が開いているので、何だか夜という感じがしなかった。礼雅が足を止めたので、最愛も同じように止まると、知らないレストランに着いた。

「ここ、初めて入る・・・・・・」
「美味しいよ。入ろう」

 店は他と違って目立たないところにあるから、とても静かだった。
 中は思っていたより広く、ジャズが流れていて、落ち着いた照明があり、シンプルで優雅な空間を演出している。

「いらっしゃいませ、あれ? 珍しい。礼雅の隣に女の子がいる・・・・・・」
「彼は野藤保(のふじたもつ)。高校からの友達。保、この子が名波最愛ちゃん」

 こんな風に言うのは礼雅が彼に前から最愛のことを話していたことが考えられる。

「初めまして、最愛ちゃん。話はいろいろと聞かせてもらっていたんだよ」
「初めまして」

 互いに頭を下げてから奥にあるテーブル席へ座った。そこが礼雅のお気に入りの席らしい。
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