この気持ちをあなたに伝えたい
 さっきまで苦しそうにしていた礼雅はもういなかった。
 朝食を食べ終え、片づけも終わってから、最愛は歯を磨いてから、自分の部屋で服を着替えようとした。

「どうして一緒に入ってくるのだ?」
「急がないと映画に間に合わないからな」

 着替えを手伝おうとしている礼雅を部屋から追い出そうとしても、彼は言うことを聞かない。

「時間だったら、心配いらない。それに私の下着姿を見ても、得なことはないだろう?」
「だから目を瞑る」

 そこまでして着替えを手伝おうとする礼雅がわからない。今から急いで映画館へ行っても、三十分以上待っていなくてはならない。
 礼雅を部屋から出して、最愛はさっさと着替えを済ませた。

「着替えたぞ」
「じゃあ、行くか」

 家から映画館まで約四十分かかり、映画館に着くまで最愛と礼雅はその間の時間をお喋りで埋めようとはしなかった。
 映画館に到着し、礼雅が映画のチケットを購入している間、最愛は売店のメニューを見ていた。

「何か欲しいのか?」
「早かったな」

 映画館の売店は大抵混んでいるから、もっと時間がかかるとばかり思っていた。

「それほど混んでいなかったからな。それより何が買いたいんだ?」
「あれ、クロワッサンだ」

 最愛が選んだものはクロワッサン。礼雅が選んだものはチキンナゲットとアイスカフェラテ。
 それらも買ってから、映画のチケットを入口にいるもぎりに渡して、シアターの中へと歩いて行こうとしたときだった。

「六番スクリーンへお進みください」
「ろ、六番スクリーン?」
「はい」

 彼女はにこやかな笑顔で可愛らしい声を出して、返事をした。
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