この気持ちをあなたに伝えたい
 最愛と礼雅が観ようとしている映画は二番スクリーンなので、そっちへ進まなくてはならない。それなのに、係員は六番スクリーンへ行くように言っている。
 最愛が映画のチケットを見ると、観るはずだった映画がなぜかホラー映画になっていたので、礼雅を睨みつけた。

「どういうことだ? これは・・・・・・」
「おかしいな。間違えたみたいだ」
「・・・・・・どうするんだ?」

 礼雅と最愛が言い争っていると、二人の後ろで並んでいる他の客達が早く行くように怒った。

「大丈夫だ。怖かったら、手ぐらい繋いでやるから」
「そういう問題じゃない」

 六番スクリーン中へ入り、一番後ろの席へ座った。
 昔は客が多くて、席に座ることができなかったら、立って映画を観なくてはならなかった。
 現在は自分の希望の席に座ることができるから、より快適になった。

「これさ、怖いか?」
「俺だって初めて観るからな。何とも言えない」

 ホラーものは昔から苦手で、最愛が小学生だった頃に友達の家へ遊びに行ったときにホラー映画を観て、泣いた経験があるので、それ以来、ホラーものから避けるようになった。

「本当に間違えたのか? 映画のチケット」
「くくっ、あぁ・・・・・・」

 礼雅の笑い方でわざとやった行為であることが明らかになった。

「観たかったのはあれなのに・・・・・・」

 眉間に皺を寄せていると、礼雅が最愛の手を繋いだ。最愛が顔を上げると、礼雅は映像に目を向けている。

「どうして・・・・・・」
「静かにしろ。始まるぞ」

 映画が終わるまで、ずっと礼雅は最愛の手を繋いでいて、じんわりと熱がこもっていた。
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