この気持ちをあなたに伝えたい
 礼雅が足を止めて、最愛が正面にある店を見ると、ステーキハウスだった。

「肉が食べたかったのか?」
「仕事仲間が教えてくれたからな。入るぞ」

 最愛は滅多にステーキハウスで食事をしないので、ステーキしかない店だと思い込んでいた。
 しかし、カレーライスやサンドイッチなどがあるので驚きだ。

「ステーキとハンバーグしかないと思っていた・・・・・・」

 種類の多さに最愛は圧倒されている。

「お前は一度も外食をしたことがないのか?」
「色魔に連れて行ってもらっている」
「行く度に忘れられては困る・・・・・・」

 メニューを開こうとしたときに女性店員が複数、礼雅を見ていた。
 最愛にとって、慣れていることではあるものの、女性店員が仕事をしていないので、最愛は深い溜息を吐いた。

「・・・・・・何の溜息だ?」
「何でもない・・・・・・」
「まだ映画は数週間続く。また来ればいいだろ?」

 最愛が観たがっていた映画を観ることができなかったので、それで溜息を吐いている。それが礼雅の考えだった。

「何を食べるか決めたか?」
「私はサイコロステーキにする。れ・・・・・・色魔は?」
「名前で呼べよな、呼びかけたのだから。それとこのステーキにする。すいません」

 礼雅は近くにいた店員を呼んだ。呼ばれた店員は早歩きでこちらに来て、注文の品を機械で記録していた。
 店員がいつ去ったのか知らずに、最愛はずっと窓の外ばかり見ていた。

「なかなかの味だな」

 最愛が頼んだサイコロステーキを店員が先に持ってきて、食べた一言がこれだった。
 数分もしない内に別の店員が礼雅が頼んだステーキを持ってきた。

「ご注文は以上でよろしいですか?」
「はい」
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