俺は、危険な彼に恋をした。
和樹さんと美奈さんの死がどれ程俺にとって受け止められない残酷な現実だったか。
二人の死が、あまりにも大きくて。
だから、洸の事を思い出した時は本当に焦った。
『あの子なら、無事だよ。多分、葬式に居るはずだ。』
『本当か!?』
『ああ、きっと和樹さんと美奈さんが必死であの子を守ったんだと思う。』
和樹さんと美奈さんの息子で有る洸が無事だと聞いた時は、ほっとした。
まるで、気が抜けたようにだ。
椎名の前で思わずしゃがみこんでしまったから。
『璃空!?』
『良かった…洸が無事で本当に。』
『そうだな。』
『椎名……』
『何だ?』
『いまから、俺の話しを良く聞け。』
俺は、意を決した。
和樹さんと美奈さんが死んだ事。
洸が無事で有った事。
和樹さんと美奈さんは、極道で有る何者かに殺害された事。
そして……和樹さんが俺に約束をした事。
それぞれの想いを胸に、決意をした。
俺には、やらなければならない事が出来た。
和樹さんと美奈さんを殺した奴を絶対に見つけ出す事。
そして、洸は必ず俺の元に連れて来る事。
洸は、俺が傍で守る。
そう決めた。
しかし、俺が直ぐに洸を連れてく事をしなかったのには、洸の気持ちが落ち着までと思っての事だった。
両親を失ったいま、きっと洸の心はほっかり穴が空いたみたいに悲しみでいっぱいな筈だと。
いま連れて行けば、混乱させるだけ。
だから時を待った。
洸が、高校生になった時……
迎えに行こうって思った。
いまじゃないと、思った。
少し落ち着くまではと思った。
そして……
洸が、高校生になって2回目の春。
激しくどしゃぶる雨の中、和樹さんと美奈さんが住んで居た家の前で俺は思っていた。
和樹さんと美奈さんが死んだ日も、こんな激しい雨の日だったなって。
あれから、2年が経った。
『俺に、何か用?』
そして……
『お前が、日向 洸か?』
和樹さんとの約束を果たす時が来た。
洸、お前を迎えに来た。