俺は、危険な彼に恋をした。
『璃空!璃空は、居るか!』
『何だ、騒がしいぞ椎名。』
『り、璃空!落ち着いて良く聞け…和樹さんと美奈さんがっ……』
『…はっ?』
椎名の口から、和樹さんと美奈さんが死んだと聞かされた時、頭の中が真っ白になった。
椎名、何を言ってるんだって。
死んだ?誰が?
和樹さんが?美奈さんが?
いや…だって和樹さんとは昨日会ったばかりなんだぞ。
そんな馬鹿な……。
そう、信じられなかった。
和樹さんと美奈さんの死に……俺は、受け止められなくて、だから直ぐに理解出来なかった。
昨日、和樹さんと会って嫌な予感が胸の内側から過ぎった……。
いつもは見せない表情だったから、後ろ姿が悲しげに見えたから。
でも、何よりも和樹さんの言葉にいちいち嫌な予感を感じさせられた。
最後に、俺に見せた切ない笑顔が頭に浮かんだ。
翌日の朝、和樹さんと美奈さんの葬式が行われたが俺が行く事はなかった。
『璃空、本当に和樹さんと美奈さんの葬式に行かなくていいのか?』
『悪い…椎名。』
『璃空…気をしっかり持て。和樹さんと美奈さんが死んだ事で1番辛いのは璃空、お前だ。けどな、和樹さんと美奈さん……殺されたみたいだぞ。』
『は?殺されただと!?』
『ああ、いまな二階堂さんから電話があって聞いたんだ。昨日、和樹さんと美奈さんが何者かに殺害されたんだと。』
『それは確かか!』
『二階堂さんが言うんだ、絶対に決まってる。』
『和樹さん…まさか。』
『多分、そのまさかだとは思う。和樹さんと美奈さんは…極道である誰かに殺された、しかも和樹さんを良く思わない連中のしわざかもしれない。』
不覚だった。
何故、和樹さんと会った時に直ぐに気付かなかったんだと……。
あの時、和樹さんは言わなかった俺に。
でも、気付くべきだったんだ。
"もし…俺と美奈の身に何か有れば洸の事を全部、璃空に頼みたいんだ。"
『くそ!』
あの時に、気付いて居れば。
俺は、深く後悔した。
あの日、和樹さんと最後に会った時の事を。
『洸…』
俺は、ふと和樹さんと美奈さんの息子の洸の名前を口にした。
『洸、アイツ、アイツは無事なのか!洸はいま何処に居るんだ!』
『ちょ…璃空!?』
俺は、椎名に飛び掛るようにして聞いた。