俺は、危険な彼に恋をした。
『俺を、一生忘れられないようにしてやるよ。』
『えっ…』
その瞬間……
俺の唇に、奴の唇が重なった。
『んんっ…!』
強引にされる奴の唇に、俺はされるがままにされた。
『んっ…やあっ…めっ…』
『早く俺を殺しに来いよ…洸。』
『……っ…なっ…俺の名前何で…わっ!』
ドンっと突き飛ばされると、奴はこれ以上何も言わずにその場から立ち去る。
『待てよ!ふざけるな!行くな!』
引止めようとするが、奴はその場から立ち去ってしまった。
『……待て…よ…ふ、ふざけんなあああ!行くんじゃね一よ!』
俺は、床に思い切り拳を叩き付けた。
そして……血を流しながら倒れる母さんと親父の元に歩み寄った。
呼んでも返事の無い母さんと親父を泣きながらも呼び続けた。
泣かないでって母さんは言ったけど俺には無理だった。
拭いでも拭いでも、涙は流れた。
一体何がおこったんだって。
あまりにも唐突過ぎたから…。
目の前でおこった現実を受け止められなかった。
殺された……見覚えのないしらない奴に母さんと親父は殺されたんだ。
『なん…で。』
何で母さんと親父は殺されなくちゃいけなかった訳?
何で殺す相手が、母さんと親父だった訳?
何で……どうして……
朝が明けるまで、俺は泣き続けた。
朝になり、すっかり外は雨があがり、青空が広がり、眩しいくらいに朝日が差し昇っていた。
母さんと親父が死んでも普通に朝は来る。
母さんと親父が死んでも普通に日常は何事も無く来る。
母さんと親父が死んだ次の日の朝を迎えたその日は、俺の15歳の誕生日だった。
『うわあああああ一!』
頼む。
夢なら…覚めてくれ。
こんなの、嘘だって言ってくれよ。
『うっ…かあさ…とうさっ…。』
その日は、最悪な誕生日を迎えた。
泣いても泣いても泣き足りなかった。