異種キャラクターバトル
† 村地



ぐれちゃんは、私のシフト時間が終わるまでお手伝いをしてくれました。

本当にただ働きになってしまうのは、そこは櫻さんに考慮してもらいました。とはいっても、櫻さんも一般の大人ですし、男性ですから、ちゃんとおねがいをしました。ぐれちゃんと一緒に。

どうかどうか、このあとご飯をおごってください。おごってください。お願いします。

二人して腕にしがみついたら、櫻さんは快く了承してくれました。そういうところが素敵だと思います。あ、今櫻さんはくしゃみをしましたね。しました。間違いなく。してなかったら、そうですね……

「むっちー、その紙ナプキンで作ったこより、どうするの」

「櫻さんの鼻にぷすっと」

「いいね、それ」

よっぽど疲れたのか、ぐれちゃんはテーブルの上にあごをどんと置いて、うなだれていました。とある喫茶店でございます。櫻さん曰く、天使に逢えるかもしれない喫茶店でございます。漆黒色のブラックコーヒーが美味しいお店です。よく来たいお店です。櫻さんは、ここへよく来ているそうです。

「そーいえばさー、むっちー」

「はいはい、なんでしょーか」

「どうなったんだろうね、結局。私らの勝負って」

「ぐれちゃん」

「うん?」

「すばらしい倒置法です」

「ははは、これでも作家志望だかんね」

「いーですねー。櫻さんも、その世界じゃ神なんですよねー」

「ふふん、残念ながら、私の書く小説の中じゃ、私が神よ」

頬杖を突く彼女は、にへらと笑いました。

「ドブネズミ」

「ふへ?」

「いやーじつは、私、今日ここへ来るまでに、ドブネズミが六法を持ちながらチーズの評論文を書いているのを見たんです」

「うっそーん」

「はい、という妄想でして」

「なんだ」

彼女のあごが、頬杖からずるりと落ちる。

おかしくて、笑った。
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