恋愛の神様

ピーの言葉が洗濯機のようにぐるぐる頭の中を巡る。

そのうちパンクした。

どーせ、僕の頭は物事を長く考える事に向いてないんだ。

僕は諦めて寝室の隣の部屋へ向かった。

寝室の隣はタツキの部屋。

と言っても、タツキがココへ泊まる事は殆どなくて、仕事部屋だ。

六畳程の部屋にはパソコンの置かれた机と、書類やCDの類がきちっと詰まった棚がある。

タツキは僕をここに連れてきた後、一人でこの部屋に籠ってる……仕事してんだろーな。

タツキに相談しようと、部屋のドアをそっと開ける。

案の定タツキは机に向いてパソコンを凝視していた。

その後ろ姿に無意識に安堵を覚える。

口煩くて、怖い時もあるけれど、それでもタツキは頼もしくて、僕の分からない難しい事もちゃんと応えてくれるから僕は無条件で頼っちゃうんだよね……。

本当は知ってるんだ。

僕はタツキがいなくちゃなんにも出来ない愚かでしょーもないニンゲンなんだって。

……まぁ、愚かでしょーもなくても僕ってヤツはのこのこ生きていけるんだろーな、なんて思ってるわけだけど…。


僕の気配に気づいたタツキはパソコンを凝視しながらふふふっと笑った。


「もう少し待ってなさい。直ぐにピーを捕まえてあげるから。」


意味深なセリフに僕はそっとタツキの後ろからパソコン画面を覗く。


………あーあ。


画面には僕とピーが映っていた。

どうやらタツキがこっそり撮っていた動画をどこかのサイトにアップしたみたいだけど。

ピーの顔は巧妙に見えない角度だけど僕はバッチリ映っていて、きっと大騒ぎになっちゃうんだろーな。

以前、仕事の延長でアイドルの子とゴハン食べた画像をファンに撮られて勝手にネットに流された時も、大変な騒ぎになったから。

タツキはコレでピーを脅して連れ戻す気なんだ……。

< 281 / 353 >

この作品をシェア

pagetop