恋愛の神様

あれから野山には明らかに一線を引かれている。

話し合いも碌にしてねぇのに……と思っても、潔く避けられて手も足も出ない。

怒ってるならともかく傷ついたみたいな怯えた表情に、手を伸ばす事も追う事も出来なくなる。

ああ。
俺が悪いんだけどなっ!

…………すんげー堪える…。



「早いとこ仲直りしとけよー。」


そんなこと出来たらとっくにやってるつーの!

お気楽に言ってくれるクマにいらつきながら、無視を決め込む。


「ったく。コレだからボンは甘ちゃんで困ンだよな。」


心底呆れたような声に俺は仕事の手を止めてクマを睨んだ。


「いい加減止めて下さいよ、ソレ。…二言目にはボンボン、ボンボンって…」


伊熊の子供といえども所詮外腹だし、実際俺の生涯、ボッチャンだった事は一度もない。


「自覚がねぇから尚更始末に悪ぃ。」


部長はへっと小馬鹿にしたように鼻で笑った。


「オマエさ、カッコウ悪ぃ事キライだろ?なりふり構わず、とか、無様だしした事ねーよな?プライド高いのは結構なこったが、やたら打たれ弱くて簡単に折れちまいやがんの。ほーら、甘ったれの糞ボンボンじゃねーか。」


ぐぅ……!

歯に衣着せぬ指摘に俺は奥歯を噛み締めて唸った。

どーせ俺は格好付けの打たれ弱いボンボンだよっ!

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