恋愛の神様
「ったく、人にちやほやされて有頂天になってんじゃねぇっつーの。欲しいもんなら貢がれンの待ってるばっかじゃなく自分でガツガツ獲りに行けや!」
まだ続きそうなクマのイビリにむっとして、俺は手早く机の上を片付けると立ちあがった。
クマが野太い眉を顰めて不審げに俺を見る。
「おーい。煽ったのは俺だが、仕事と私用は弁えろよー?」
「外回りに行くんです!!」
誰が野山のトコロへ行くと言ったか!
俺は牙を剥き出して吠え返し、カバンを持って部屋を出た。
早く仲直りしろっていうクマの言い分は尤もだ。
いつまでもこんなギクシャクした関係は色々な意味でマズイだろう。
そのうち仕事にも支障をきたさないとも限らないしな。
…………でも。
俺達の仲直りって実際にはどんな状態なんだ。
お互い無責任に快楽だけを求める間柄か。
廊下を歩いている最中、正面から来る人物に俺はちょっとだけ眉を上げた。
亜子が腕の書類から目線を上げ、俺を見つけてうっすらと微笑する。
「……久しぶり。随分、会ってなかった気がするわ。」
「……ああ。」
最後に会ったのはあの書類庫だ。
会えなくてもメールや電話で連絡を取り合っていた今までの事を考えると二人にとってこの音信不通は結構長いものだ。