恋愛の神様

    草賀零於




※※※reo kusaga※※※




家に着くなり俺は力尽きたようにソファーに突っ伏した。


「あのぅ、草賀さん。本日はお仕事どうなされたんですか?」

「サボった。……色々忙しかったんだよ。」


昨日は虎徹に連絡を取り付けたのを手始めに、ウチの親に報告して。

家の奴等は、何故か野山を買っているので、いきなりの話で面食らいはしたものの、大いに祝福していた。

……今更ナシになったとか言ったらそれこそブーイングが起きそうだが…。


夜、虎徹に会って、今更母親から聞かされた昔話を冒頭に仲互いも解消したし。

結局、亜子の話は互いにしなかったけど。


今日は朝から役所へ行って用紙を貰って来て、前もって亜子に伝えてあった通り、証人の欄にサイン貰って。

産む前に式あげるとか言いだした時の為に、一応鹿島部長経由で支配人にそれとなく話しを付けてもらったり……。



昨日の夕刻、シロウサギの襲撃には危うくキレかかりそうになったが―――。





社内での用事を済ませて外へ飛び出すと、薄闇の中にウサギが一匹、何をするわけでもなく霞のように白くぼんやりと、いた。

構える俺に、シロウサギは衒いもなく、いきなり歌うように住所を口ずさんだ。

……って、なんの住所だ?

怪訝に思っている間にもシロウサギは追い打ち。



『ピーの子はボクんのだから。』


………は?


寝言のようにそれだけ言ってふらっと歩き出したシロウサギ。

俺はその言葉を理解するのに暫しかかり、追う事が出来なかった。





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