恋愛の神様
影の並々ならぬ努力と並行し、山田とはそれとなく話をするまでに距離を縮め、何気な感じを装って恋愛小説の話を振って行きます。

そして策謀の最終段階で、人気を博している映画の原作を貸付。

本日最終ミッション。
チケットを渡す。
そして二人はらぶらぶ映画デートにゴールイン!

…となるはずでした。

そこから先はミッション・2に移行するのですが、内容は後日、機会がありましたらご説明します……ないと思いますけど。



浅瀬にうっかり浮かび上がってしまった深海魚のように生気もなくまばゆい光の中で意識を手放していると、いきなり頭に衝撃が加わりました。


「……い゛たい……」


叫び声にすら生気アリマセン。


うっそりと顔を上げ、陽光よりも眩いオーラに目を射抜かれ、「うっ!」と顔を顰めます。

渡り廊下を歩行座間に、ハートブロークンなワタクシに衝撃を加えたのは、営業一課の草賀零於さんでした。
私より三つ程年上なので一応さん付けます。


男らしく整った顔立ちですが、無骨さより綺麗と称するべきでしょう。
妙な色気が滲み出ています。
デトロイトの工業廃水並みに垂れ流しです。

草賀さんはニヤニヤと意地の悪い笑顔でワタクシを見下ろしていました。

この人、顔同様、体格もモデル並みです。
ちなみにワタクシは標準以下ですので、大幅に見下されています。


「チィちゃん、また連敗記録更新かよ。ある意味アッパレだよなー。俺の無敗記録、分けれるもんなら分けてやんのになー。」


……今、ワタクシにはこの方のネクタイを力いっぱい締める権利があると思います。


さも可笑しそうにくっくっくと笑っている草賀さんを下から精一杯睨みつけます。

ええ、そうでしょうとも。

この容姿ですので、草賀さんはモテます。
社内でもかなりの人気です。
多分、社外でも人気でしょう。
無敗記録と豪語するのも伊達ではないでしょう。



が、

今のワタクシにあえて言う辺りに殺意を覚えます。


< 4 / 353 >

この作品をシェア

pagetop