恋愛の神様
ガマンも限界で、俺は足早に近づいた。
「悪ぃな。待たせた。」
有無を言わさず野山を奪還。
その途端、むっとしたように野郎共が振り向いたが、俺を見て逃げていった。
ふん。
生憎、俺はこういうところでハッタリが効く容姿なんだよ。ザマーミロ。
罵声を浴びせてやりたいところだが、とりあえず堪えて厭味ったらしく野山に笑いかけた。
「ヨカッタな。洒落た甲斐があって。ハジメテナンパされた気分はどうだ?」
野山はきょとんと俺を見上げ、暫くして「え!」と声を上げた。
「あれナンパなんですか?………ああ。『お茶しない?』がナンパの常套句かと思ってましたが、お茶がないこの場所では『なんか呑む?』が代用されるわけですね…。て!ナンパ!?私がされたんですか!?ヒエー!」
……オマエ、一体今の出来事を何だと思ってたんだ?
俺はソッチの方が気になるぞ。
てか、『お茶しない』がナンパの挨拶とか、そんなルールないから…。
俺は間を外してひゃーひゃー騒いでいる野山にガクリと項垂れた。
「で。水を差すようで悪ぃが、あいつら中坊かよくて高生だからな。」
「え……………。」
奴等と同世代に見られた事を瞬時に悟ったらしい野山は見事にフリーズする。
「おい、どーする、まだいる気?オマエがそんなんじゃ、俺気が休まんねーんだけど」
この時―――正直に言おう。
俺は亜子の事をすっかり忘れていた。
ここからさっさと出たいと思ったのは本心だが、野山を早く帰そうとかそういうのじゃなく、目を離す度にこれじゃ俺の神経が持たない。