恋愛の神様
「つーわけで、手持ちの仕事は切りつけるなりなんなりして、備えておけ。以上解散。」
その言葉にエリートたちはパッと自分の仕事に散ってゆきました。
色々な意味で鮮やかです。
だぁぁぁぁ。
ワタクシは一気に弛緩して、テーブルに突っ伏しました。
徐にクマを睨みます。
「説明出来るヤツがワタクシ以外にいないなどとおっしゃってましたが、いるじゃありませんかっ!クマ、じゃなく部長、この企画内容をこれ以上なく把握してらっしゃいますね!?」
会議の最中には一度も書類に目をやらなかったくせに、最後の注釈は見事でした。
全てを把握していなければ、ああも容易く問題個所を拾い上げることなど不可能です。
「オマエ、俺をなんだと思ってやがんだ。大体、あの資料用意したのは俺だぞ。」
どうやらこの度は、新人内村には荷が勝ちすぎると思って、部長自ら資料を揃えてやったようです。
そこまでお膳立てされて逃げ出すなんざ、ウチムラ、男の風上にも置けませんが。
しかし、あの資料、全てを揃えたというだけあってテキストとしてはパーフェクトでした。
一課の天狗共に付けいる隙をあたえないくらいに。
「…………部長、人類文字を使ってください。」
字汚すぎです。
認めているのを口に出すのは何だか悔しくて、ワタクシはあえて憎まれ口を叩きました。
「るせ、ほっとけ。」
ぼふっと頭に圧力が加わって、ワタクシの体は数センチ沈みました。