恋愛の神様
何か文句がおありらしい厳めしい顔の女子を前にワタクシは溜息を吐きつつ、平静に切って返します。
「ワタクシ、自ら恋愛の神様と名乗った覚えはありません。根も葉もない噂を安直に鵜呑みにした挙句、詐欺だなんだと騒ぎたてて救いようのない愚かしさですね。」
叩けば直ぐに泣き出すとでも思っていたらしくワタクシの反論に女子たち、たじろぎます。
しかし、ワタクシごときに反抗されたことが癪に障ったらしく、顔に朱を注いで向かってきました。
「な……なによっ!」
しゅっと風を切って手が振りあげられました。
げっ!
ワタクシ、ガチやるほど腕に自信はありませんよ!
暴力はんたーい!
ぎゅっと目をつぶりカメのように首を竦めた時です。
「よぅ。奇遇だねチィちゃん。なぁにしてんの?」
からかうような声が間を割りました。
「く、草賀くんっ………!」
自分たちの立場が悪いと悟った女子達、逃げるように慌てて去って行きました。
「た……助かりました。ありがとうございます。」
遠のいた足音にはぁああと深い息を吐いて、ワタクシはベンチチェアにへなへなと腰を下ろしました。
本日はあまりイイ運勢ではないらしいです。
がっくり。
椅子に項垂れているワタクシを見下ろし草賀さんはくっくっと笑っています。
この方、ワタクシが苛められるのが大層、お気に入りのようです。
向う脛を骨よ砕けろとばかりに蹴り飛ばしてやりたい心境です。