恋愛の神様


倦怠感の抜けきらない体を後ろから抱きとめる胸に押し付けて過ごす時間。


「………約束があったのに……」


時計は見なかったけれど、もう、間に合わないのは分かっていた。

時間には間にあっても……もう、目的の場所には辿りつけない。
自らの手で切り捨ててしまったのだから。

そう思ったら、自分の意志であったはずなのに、なんだか悲しくなって、つい恨みがましく呟いていた。


「知ってる。」


あまりにもそっけない返事に、やおら苛立ちが湧いた。


誰の所為で私が安寧の将来を手放したと思ってるのよ!?


「知ってて………どうしてこんな事!」


臆面もない双眸が噛みつく私を見詰め、徐に溜息を吐く。


「オマエ、俺の事がスキだろ?」

「………………は?」


思いもよらない指摘にきょとんとして、次の瞬間真っ赤になった。


知られている。


そう思ったら途端に恥ずかしくて、惨めになった。

じゃあ、これは同情なの?
それともお節介?
自分の気持ちにも気付かないアホ女が、大して好きでもない男のところへのこのこ出向くのを阻止してやったとでも言いたいの!?
あまりにも哀れだったから一度くらい抱いてやろうとでも思ったの!?
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