恋愛の神様

涙が溢れそうになって、怒ったふりで慌ててそっぽを向く。
それなのに、顎を掬う指に引き戻されて唇を奪われた。

ああ、もう。
なんだってこの男はこう人の嫌がる事をするのかしら。

今そんな優しいキスをされたら涙が堪えられなくなってしまう。


「ズルイわよ……。こんなの、…ヒドイ」


どうして好きだなんて気付かせたのよ。
アナタの熱を知らなければこれからだってヌルイ幸せに満足できたのに。

頬に落ちた涙を唇が拭っていく。


「悪いな。俺は好きな女が他の男のところへ行くのを黙って見過ごす程お人よしじゃない。」


………………。


「え?」


聞き逃しそうになった“好き”という単語。
思いもよらないその言葉に驚いてカレを見詰める。

カレはふぅっと自嘲気味に溜息を吐く。


「俺だってさすがに焦ったんだ。腹も立ってたし、な。だけどこんなところで抱くつもりはなかった、神に誓って。だからこれでも一応反省はしてるぞ?」


…………。


「え?」


それは一体何に対しての反省なの?
『ヒドイ』に対する言い訳なら
……ズレている。

反らされることなく私を射抜く冴え冴えとした光を孕んだ双眸を見詰める。


「オマエ、俺のコト好きだよな?」


………………。


今更ながらに確認したいのだけど、先ほども繰り返されたソレはひょっとして断定ではなく質問なの?


……ちょっと待って。


< 84 / 353 >

この作品をシェア

pagetop