恋愛の神様
私は誰よりも何よりも熱い、この男が好き。
近づく唇に逆らわず、唇を重ねた。
きっと私は幸せにはなれない。
憧れて、憧れて、欲求に逆らえずに太陽に近づき過ぎたイカロスみたいに。
きっと、いつか地に落ちる。
求めた者の手によって堕される。
分かっていても求めずにはいられなかった。
カレを見詰めながら、昨日の電話の相手を思い出す。
私ってサイテイな女だわ。
カレが忙しい人で恋人如きに現を抜かしていられる立場じゃないのを知らないわけじゃない。
秘書課―――私の所属する課は、上層部の事務を一手に担っている。
営業課でいえば、営業事務課みたいなもの。
秘書課は仕事の雑務に加えて、上層部の大雑把なスケジュール管理もする。
大雑把な、と言うのは、社長以下最上幹部には各自に専用秘書が付いているから。
だから大まかなりにカレが驚くほどの仕事をこなしているのも知っている。
カレが社長西院条伊熊氏の愛人の子だというのは学生時代には既に周知の沙汰だった。
そのうちその会社に入ることも。
だからこうなる事は付き合い始めた頃に覚悟していたはずなのに………。