恋愛の神様

     草賀零於


※※※reo kusaga※※※



あーやっぱりここか。


俺は事務課を覗いて乾いた笑みを浮かべる。


「たかが小鳥一匹何を出し惜しみしてやがる。さっさと観念して俺によこせ!」

「断る。たかが小鳥。されど小鳥。」

「なんて上司だ。自分の雑務が増えると思って手放し難いってか!?」

「そういうオマエさんはどうなんだ。野山を自分の雑務要員にしようって腹だろーが。」

「当然だ!!」


小鳥一匹を巡って熊と馬の一騎打ち。

この間のプレゼン以降、野山小鳥を営業一課に寄こせ!と我が部長は熱烈アプローチを繰り返している。
暇さえあれば事務課に出向いて馬場課長を丸暴顔負けに脅している。

尤も呆気なく迎撃されて地団太を踏んでいるが…。

イイ歳の大人がどうなんだ、仮にも部長がよぉ。

まぁ、そんな人だというのは知ってる奴等は知っていて、今更だ。

明朗闊達。
豪快にして豪胆の傑物。

この人の破天荒な行動にウチの課員は大いに振り回される。

しかし―――その突飛な言動の裏には徹底した調査と考察があって、思い付きや力技だけの男ではないとは知る人ぞ知る事実。

だからなんだかんだ言いながらウチの奴等はみんな部長を信頼してるし敬愛してんだよな。
振り回されるのはマジで勘弁願いたいが。

それはそうと馬場課長、大抵存在だけで怯えるクマ―――もとい、鹿島部長を前に一歩たりとも怯まないとは、恐れ入るな。

なにはともあれ傍目に見るとつくづく低次元な言い合いだ……。


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