君と奏でるノクターン
宗月は眉間に皺を寄せ、ポツリ呟く。


「あれ以来、ショパンは弾いていないと……弾けないと思っていた」


「そうだな。彼があれ以来数年、コンクールに出場していなかった理由もショパンだからな」


「へぇ~、そうなのかい? とてもそんな風には……堂々としたものだったがな」


宗月はクィッとグラスを開け、ピアノを見つめる。


「マスター、弾いていいか?」

静かに訊ねる。


「ああ、どうぞ」


宗月は席に着くなり、鍵盤を1音も漏らさず、指を走らせ鳴らしてみる。


――!?…… ……このピアノで「木枯し」を


宗月の顔にはっきりと驚きの表情が浮かぶ。

と同時に、宗月はフッと笑みを溢す。


「どんな『木枯し』を弾いたのか……聴いてみたかった」


ポツリ呟き、ピアノを弾き始める。


――こんなピアノで……よく弾けたものだ


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