君と奏でるノクターン
流れるように美しい分散和音が奏でられる。

柔らかな音色はピアノの音と言うより、ハープを思い出させる。

自然に吹く風が音を爪弾くような優しい音色。


――これはまた昨日の「木枯し」とは対照的な……優しい調べだな


マスターは、顔に似合わぬ曲を弾くものだと思う。



「ショパン『エオリアン·ハープ』……」

扉を開け、店に入ってきたミヒャエル。


「ショパン『エオリアン·ハープ』……」ショパン、エチュード第13番変イ長調25ー1。
この曲は『牧童』とも呼ばれてるんだ。ショパンが『雨宿りの牧童が静かに笛を吹く姿を想像して作った』と語ったって」

ミヒャエルはカウンター席に座り、マスターに話しかける。


「エオリアン·ハープは、ギリシャ神話の風神アイオロスが由来だって言われてる」


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