君と奏でるノクターン
「周桜だよ。ピアニスト周桜宗月が彼の父親」


「周桜……Jr.!?」


ピアノとヴァイオリン演奏が終わる。


感動冷めやらぬ店内。


詩月は静かに、解説をつらつらと、述べている学生に歩み寄る。


「紹介をありがとう。気持ち良く解説中の所、申し訳ないけれど、僕は周桜Jr.に甘んじるつもりはないんだ。
親の七光りなんて言わせない」


流暢なドイツ語、抑揚なく淡々と話す。


「父は父、僕は僕だ。周桜宗月は2人いらない。
今は父に敵わなくても、いずれ父を越える演奏家になってみせる」


唖然としている学生を真っ直ぐ見つめる。


碧い瞳の真剣さに学生がたじろぎ、後ずさる。

体格も身長も学生の方が、かなり大きい。

詩月は臆することなく、ドンッと激しく壁を鳴らす。

「な……なんだよ」


「覚えておいてもらおうか。僕は周桜Jr.ではない。詩月だ、第1の周桜詩月だ」

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